Window Maker Usage for Vine MATSUMOTO Shoji 著 Written: <1999/03/05 13:45 on parasite.privnet> この文書には、Vine Linux の標準ウィンドウマネージャ Window Maker の基 本的な使用方法が書いてあります。 1. ウィンドウマネージャとは Linux や UNIX 系の標準的なグラフィック/ウィンドウ機能提供プログラム X Window System では、ごく簡単な描画機能と単純なウィンドウ操作機能しか提 供されていません。ウィンドウマネージャは、ウィンドウの大きさや位置、ア イコンなどをマウス等で操作するためのプログラムです。最近のウィンドウマ ネージャは非常に高機能になっており、次のような機能を備えているものが多 いです。 仮想デスクトップ 画面を擬似的に広く使うための機能です。例えば、800x600の画面を4枚 並べて1600x1200の画面であるかのように見せることができます。マウ スポインタが画面の端に来た時に自動的にスクロールさせたりできるも のもあります。広く見せるのではなく、複数のデスクトップを切り替え るタイプのものもあり、 Vine の標準ウィンドウマネージャである Window Maker はこちらのほうです。 アプリケーションランチャ デスクトップにボタンのようなものを表示し、それをクリックすると特 定のアプリケーションが起動される機能です。Windows で言えばデスク トップに置いたショートカットに当たります。アプリケーションの起動 だけでなく、ウィンドウマネージャ自体の設定を変更する機能を備えて いたり、ボタンそのものにアプリケーションを貼り付けたりする機能が あったりします。Window Maker では Dock がこの機能を果たします。 見た目の変更 タイトルバー、タイトルバーのボタン、メニューなどの見た目、配置を 変更する機能です。単に色を変えるだけのものから、画像を貼り付けた りアニメーションを行ったりできるものまで、いろいろありま す。Window Maker にも「テーマ」という機能があり、デフォルトでも 様々なテーマが準備されています。 キーボードショートカット ウィンドウマネージャに関する操作(ウィンドウの操作、デスクトップ の移動、アプリケーションの起動など)をマウスではなくキーボードを 使用して代行する機能です。 2. Window Maker Vine の標準ウィンドウマネージャは、NeXTStep に似た外観と、ほとんどの設 定を GUI によって設定できるという特徴を持つ、Window Maker です。画面を 仮想的に広く見せるようなタイプの仮想デスクトップ機能はありませんが、切 替式で動的に数を増減させることのできるワークスペースという機能がありま す。 Window Maker には他のウィンドウマネージャにはない「アプリケーションア イコン」というものがあります。起動されているウィンドウの分身のようなも のが、画面左下に表示されます。いわゆる通常のアイコンのには小さなタイト ルバーが付いているので、見分けられるでしょう。アプリケーションアイコン は、Windows のタスクバー内のタイトルに相当します。 2.1. ウィンドウの操作 Window Maker によるウィンドウの基本的な操作を説明します。 ウィンドウの移動 タイトルバーを左ドラッグします。タイトルバーが見えない場合でも、 ウィンドウ上で [Alt]+左ドラッグすることができます。設定によっ て、ワークスペース間を移動させることもできます。 ウィンドウの大きさの変更 ウィンドウの下にあるリサイズバーを左ドラッグします。また、ウィン ドウ上で [Alt]+右ドラッグすることもできます。 タイトルバーを [Ctrl]+左ダブルクリックで縦方向に最大化、 [Shift]+左ダブルクリックで横方向に最大化します。 [Alt]+[/] にも 縦方向最大化が割り当てられています。 アクティブウィンドウの切り替え マウスで切り替えるほか、[Alt]+[TAB] によって画面内のアクティブ ウィンドウが順番に切り替わります。 ウィンドウを上や下に タイトルバーをクリックすると上に出ます。[Alt]+クリックで下に隠れ ます。[Alt]+[↑] もしくは [Alt]+[↓] でアクティブウィンドウが上 下に浮いたり沈んだりします。また、WPrefs や wmakerconf でフォー カスが当たると自動的に上に出るような設定にもできます。 ウィンドウを閉じる ウィンドウの右上の「×」ボタンをクリックすると、ウィンドウが閉じ られます。ただし、この操作はアプリケーションを強制終了させること があるため、できる限りアプリケーション用の終了ステップを踏むべき です。この操作でウィンドウが閉じない場合は、タイトルバーを右ク リックして「強制終了」を選びます。 アイコン化、ウィンドウシェード ウィンドウ左上の「□」ボタンをクリックするとアイコン化され、画面 左下にアイコンが表示されます。タイトルバーをダブルクリックする と、タイトルバーのみにシェードされます。また、ウィンドウ内で [Alt]+[M] すると最小化(いわゆるアイコン化)、 [Alt]+[H] するとア プリケーションアイコン内に隠されます。 2.2. 各種メニュー Window Maker のメニューは、項目を選択したあとも独立したウィンドウとし て残すことができます。タイトルバーが付いているメニューについては、タイ トルバーをもう一度クリックすることで、独立したウィンドウになります。 メインメニュー ルートウィンドウ(いわゆる背景)で右クリックすると出るメニューで す。また、 [F12] というショートカットも設定されています。アプリ ケーションの起動や、ウィンドウマネージャの終了などのメニューで す。このメニューからは、外観や背景、アイコンなどをまとめて設定で きるテーマの機能も呼び出せます。 ウィンドウリスト ルートウィンドウで真中クリックで出ます。また、[F11] でも呼び出せ ます。現在ウィンドウマネージャが管理しているウィンドウのリストで す。 ウィンドウ操作メニュー タイトルバーを右クリックすると出ます。ウィンドウの移動、大きさの 変更、強制終了、アイコン化、属性変更などを行うためのメニューで す。 2.3. ワークスペースとClip Window Maker には動的に数を変更できるワークスペースという機能があり、 他のウィンドウマネージャにおける仮想デスクトップの代わりに使用できま す。 [Alt]+[Ctrl]+[→] もしくは [← ] で各ワークスペース間を移動できる ほか、[Alt]+ファンクションキーで対応するワークスペースに移動できます。 他のウィンドウマネージャのPagerに相当するのが、画面左上に表示されてい るClipです。右上と右下の△でワークスペース間を移動できるほか、通常は画 面左下に並べられるアプリケーションアイコンを引き寄せたり、引き寄せたア イコンを内部に折り畳んだりできます。 ルートウィンドウで左ドラッグして範囲指定したり、タイトルバーを [Shift]+左クリックすることでウィンドウの枠が白くなっていれば、ワークス ペースを移動してもウィンドウをそのままにしておくことができます。 2.4. Dock 画面の右上に並んでいるアイコン群です。アイコンの左下に … がついている アイコンは、ダブルクリックすると何らかのアクションが発生します。この Dock アイコンは、上から順番に次のようになっています。[図:Dock ] Vine Linux アイコン 通常ダブルクリックしても何も起こりませんが、Netscape Communicator 実行中にダブルクリックすると、インストールされてい る Vine ガイド文書にジャンプします。 カレンダー 何の変哲もない、日めくりカレンダーです。ダブルクリックしても、何 も起こりません。 ヘルプ tknamazu によるドキュメント検索システムが起動します。tknamazu で は、 jman や JF の日本語文書などを検索することができます。もちろ ん日本語での検索が可能です。 ウィンドウマネージャ設定ツール Window Maker の設定ツール ``WPrefs'' です。Window Maker は、従来 のウィンドウマネージャと異なり、GUI でカスタマイズすることが可能 となっています。 PPP 接続もしくは メール到着状態 PPxP がインストールされていれば PPP 接続(xppxm)が、インストール されていなければ メール到着状態(WMMail)が入ります。 PPP接続(xppxpm) PPP 接続ツール PPxP のインターフェースです。これを使用する前 に、tkppxp を起動して接続に関する情報を設定しておく必要があり ます。tkppxp は、ルートウィンドウ(何もない背景の部分)でマウス 右ボタンをクリックすると表示されるメインメニューから、ユー ティリティ→ネットワーク→PPP 接続を選べば実行できます。詳し くは「PPxP QuickStart for Vine」を参照してください。 メール到着状態 メール到着状態を表す WMMail.app です。ダブルクリックすると vmail が起動します。 ネットスケープコミュニケータ WWW ブラウザの Netscape Communicator です。若干の制限があります ので、 /usr/doc/netscape-4.08_jp 以下のドキュメントも参照して下 さい。 ターミナル(kterm) 日本語表示可能ターミナル kterm が起動されます。通常の作業は、こ のターミナル上で行います。 メーラ(vmail) Vine Linux オリジナルメーラ vmail が起動されます。 簡易エディタ(vedit) Vine Linux オリジナル簡易エディタ vedit が起動されます。 Dockは、GUIによって動的にメニューを設定できるユニークなアプリケーショ ンランチャでもあります。ダブルクリックすることで登録されたアプリケー ションが起動されれます。設定のメニューは右クリックで表示されます。 Dock からドックアイコンを削除したい場合、アイコンを左ドラッグして画面 の中心付近で離します。ドックアイコンを追加したい場合は、画面左下に表示 されるアプリケーションアイコンを左ドラッグして、Dock の空き場所で離し ます。通常、あるドックアイコンから起動されるアプリケーションはひとつだ けですが、[Ctrl]+ダブルクリックによって複数起動することもできます。 補足:アプリケーションによっては、アプリケーションアイコンが表示 されないものがありますが、以下のような手順で登録することができま す。 1. kterm などのコマンドラインから $ kterm -name <アプリケーション名> -e <登録したいアプリケーション> を実行する。 2. <アプリケーション名> というタイトルの kterm が起動するので、 タイトルバーを右クリックして「属性」を選ぶ。 3. タイトルバーが「<アプリケーション名>.KTerm」となっていること を確認し、タイトルバーで右クリックしたメニューの「属性」か ら、「アプリケーション固有の設定」の「起動時に隠す」をチェッ クする。ついでに「アイコンと初期ワークスペース」でミニウィン ドウのアイコンも変更しておくこと。 4. アプリケーションアイコンを Dock にドラッグする。 登録されたドックアイコンで右クリックして「設定」を選べば、アプリ ケーションのパスと引数が「kterm -name <アプリケーション名> -e <起動したいアプリケーション>」となっていることがわかるでしょう。 2.5. メインメニュー ルートウィンドウで右クリックすると出るのがメインメニューです。様々なメ ニューがあるのですが、ここでは注意してほしい部分のみ紹介しておきます。 ユーティリティ→管理ツール このメニューには、root ユーザが扱うべき管理ツールが登録されてい ます。 kterm が起動しパスワードを聞かれますので、root 用のパスワ ードを入力してください。パスワードの入力に失敗すると終了します。 いろいろ このメニューは、「wmconfig --output wmaker」というコマンドによっ て自動生成されています。各パッケージによって /etc/X11/wmconfig/ 以下にインストールされたファイルを参照しています。 2.6. Window Maker の設定 Window Maker の各種設定は、Dock に登録されている WPrefs や、メインメニューの「外観・効果音の設定」にある wmakerconf を利用して、GUIによって行うことができ ます。個人用の設定ファイル自体は ~/GNUstep/ ディレクトリ以下にあります が、それらのファイルを直接編集する必要はほとんどありません。WMPrefs や wmakerconf で設定した内容のほとんどは、直ちに実行中の Window Maker に 反映されますので、 Window Maker 自体を再起動する必要もほとんどありませ ん。 WPrefsでの設定は大きくわけて下のような項目に分かれています。 ウィンドウ操作の設定 自動配置方法、移動時の表示など ウィンドウフォーカスの設定 フォーカスのポリシー、ウィンドウを自動的に前に出すかどうかなど メニューの設定 メニューの配置方法など アイコンの設定 各アイコンの表示方法など その他の操作性 リサイズ情報表示、バルーンヘルプの表示など 検索パスの設定 アイコン用の画像を検索するパスの設定 ワークスペースの設定 ワークスペース、Dock の設定 その他の設定 アニメーションの設定など アプリケーションメニューの定義 メニューの内容設定 キーボードショートカットの設定 キーボードショートカットを簡単に定義できる マウスの設定 マウスの速度など エキスパート設定 あまりいじらないほうがよい wmakerconf でも設定できる項目は同様ですが、特にウィンドウの色設定など を細かく指定できます。テーマを自作したい人にはうれしい機能ですね。つい でながら、 http://wm.themes.org/ には Window Maker 用の様々なテーマが収集されていますので、派手な画面に 興味のある人は見てみるとよいでしょう。 2.7. Window Maker の終了 Window Maker を終らせるには、メインメニューから「終了:セッションの終 了」を選びます。 3. 著作権 この文書は松本庄司(MATSUMOTO Shoji)による著作物で、著作権は著者が有し ます。改変、再配布についての許諾、バグ報告は Project Vine までお願いします。